防災対策について。
近年多発する地震や異常気象、新型コロナウイルス感染症などにより、防災上の課題が顕在化しております。そんな中、大規模自然災害を想定し、事前の防災活動から復旧復興までを見据えた強くしなやかなまちづくりを推進するため、平成25年に国において国土強靱化基本法が制定され、平成29年には埼玉県地域強靱化計画が策定されました。現在、県内では、さいたま市や春日部市、熊谷市など3市が計画を策定し、9市町が策定中、12市町が策定予定となっております。戸田市においても、現在、計画が策定中であり、先日の総合振興計画審査特別委員会において、戸田市国土強靱化計画案の概要が報告されました。
そこで、まず、(1)戸田市の地域強靱化計画の策定状況についてお伺いいたします。
続きまして、(2)水害時の避難について。昨年の台風19号を通じて、戸田市は多くの被害とともに、様々な課題が顕在化いたしました。特に戸田市では、荒川が氾濫した場合、市内全域が水没するため、市民に対し、北の高台へ広域避難するように周知啓発しておりますが、避難勧告発令後に高台を目指して避難を始めるのは現実的に難しいと感じております。そこで、戸田市の水害時の避難の現状や周知啓発について、市の対策をお伺いいたします。
最後に、(3)コロナ禍における防災訓練や啓発活動について。昨年の台風19号や新型コロナウイルス感染症を経験して、市民の皆様の防災の意識はこれまで以上に関心を示していると感じております。その一方で、防災訓練などのイベントが中止され、周知啓発の機会が減り、実にもったいなく感じております。現在のコロナ禍では様々な媒体で防災の啓発活動を行うことが肝腎かと存じますが、市のお考えをお伺いいたします。こちらの質問については、先日の一般質問において、何人かの議員より防災に関する質問がございましたので、重複する箇所がある場合は御配慮いただき、御答弁をお願いいたします。
◎森谷精太朗 危機管理監 3、防災対策について、(1)地域強靱化計画の策定状況についてお答えいたします。
本計画は、平成25年12月に策定された強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化法に基づき、発生が危惧される首都直下地震等による被害や降雨の極地化、集中化による風水害等、本市に起こり得る様々な大規模自然災害のリスクと最悪の事態を想定し、事前に備えておくことで致命的な被害を回避し、迅速に復旧復興できる強靱な地域づくりを計画的に推進するために策定するものでございます。本計画は、国の国土強靱化基本計画及び埼玉県の地域強靱化計画を基本に、戸田市第5次総合振興計画の下位計画として整合、調整を図りながら、一体として令和3年3月の策定に向けて準備を進めているところでございます。策定後は、本計画を基本として、国、県、事業者、地域等と一体となって、地域強靱化に関する施策を計画的に推進してまいります。
次に、(2)水害時の避難についてお答えいたします。
戸田市は、荒川が氾濫した場合、市内全域が浸水するおそれがあります。このことから、ハザードブックや市ホームページにおいて、市民の皆様に、有事の際には自分自身で気象情報や災害情報等の収集、判断を行い、早期に戸田市外の浸水しない地域や遠方の親戚宅等へ避難する広域避難を推奨するとともに、危険が差し迫っているときは近くの中高層建築物への垂直避難、また、自宅等が3階以上の中高層建物の場合にはその建物内にとどまる屋内安全確保も検討するよう呼びかけております。今年度予定しております戸田市ハザードブックの改訂において、水害時の避難方法の在り方等につきましても分かりやすい周知に努めてまいります。
次に、(3)コロナ禍における防災訓練や啓発活動についてお答えいたします。
令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響や市役所庁舎等の爆破予告への対応により、計画していた防災訓練が実施できない状況でございました。しかしながら、市民の皆様の防災意識の啓発向上を図るため、改めてシェイクアウト訓練を計画し、今年度中に実施できるように準備を進めていく考えでございます。
また、防災に関する普及啓発といたしましては、市ホームページにおいて、防災行動計画として、今年度新たに荒川の洪水タイムラインを掲載し、周知啓発を図ったほか、ペット同行避難や避難所における感染症対策などの周知を行っております。
以上でございます。
◆1番(矢澤青河議員) ありがとうございました。
(1)の強靱化計画は、言わばリスクマネジメントであり、起きてはならない最悪の事態を想定し、この事態を回避するために何をすべきかという観点から作成するものです。先日報告のあった戸田市の計画案と策定済みのさいたま市などのリスクシナリオを比較すると、避難所において、疾病感染症などが大規模に発生する事態、避難行動要支援者への支援の不足などにより、要配慮者に多数の死傷者が発生する事態など、医療福祉など幾つかのシナリオがありませんでした。現在作成中ですので質問はしませんが、福祉部などほかの部局との連携を強化し進めていただきますよう要望いたします。
それでは、順次、再質問いたします。
(2)の水害時の避難には、緊急時における市内の高所避難と早期の市外への広域避難があり、市内外に避難所を確保する必要があると考えております。
戸田市内での高所避難の確保としては、イオンモール北戸田やララガーデン川口をはじめ、競艇場や戸田駅前の遊技場などのほか、春日部市などで始めた車中泊避難所専用の一時滞在場所の拡充など、民間などとの協定推進が必要かと考えております。こちらについては先日の質問にて、ボートレース戸田などの民間に呼びかけることや車中泊について検討の必要があるとの答弁を伺いましたので、今後進めていただきますようよろしくお願い申し上げます。
次に、早期の市外の広域避難について、現在、戸田市では北の高台への避難を呼びかけており、さいたま市の避難所を紹介しておりますが、戸田市の人口を考えると、まだまだ足りないのが現状です。加須市では、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、4県の5市町と河川事務所で広域避難協議会をつくり、広域避難体制を構築しております。さらに、バス会社とも協定を結び、実際に昨年の台風19号では、避難した9,400人中850人が市外へ避難しました。市外への避難場所確保についても、今後さらに進めていく必要があると考えますが、広域避難の取組として、他市や市外民間施設との協定締結状況についてお伺いいたします。
◎森谷精太朗 危機管理監 広域避難については、ハザードブックに示すとおり、早期に北の高台へと記載しているほか、さいたま市との覚書に基づき、浸水のおそれがない、さいたま市の避難所を広報しております。市といたしましては、広域避難の一つとして、引き続きさいたま市との連絡、調整を密にし、連携を深めていきたいと考えております。
市外の民間施設などについては、現在、協定を締結している施設はない状況です。今後、先進自治体などの事例を参考に検討してまいります。
◆1番(矢澤青河議員) 再質問いたします。
参考資料の2ページ目を御覧ください。こちらは江東区、墨田区、足立区、葛飾区、江戸川区の5区で実施している水害時の広域避難の啓発チラシです。この江東5区は大規模水害時に域内全域が水没する地域のため、共同で広域避難計画避難を立てて、独自の避難勧告を発信しております。
左上のこの計画を見ますと、まず、台風接近の3日前から共同検討を始め、2日前には自主的な広域避難の呼びかけを行います。そして、1日前には広域避難勧告を発信し、車での避難を原則禁止として、区内全域の避難を勧告しております。そして、9時間前には、緊急の垂直避難指示を出し、広域避難を中止して、区内での浸水より高い自宅や施設への高所避難を指示しております。
一方、台風19号での戸田市を見ると、台風接近のおよそ10時間前である当日13時に避難準備・高齢者等避難開始の情報を発信し始めましたが、その頃には既に電車などは計画運休により利用できず、原則車での避難を禁止していることから、現実として広域避難は難しいと言えます。
また、参考資料の下の部分、この江東5区の取組で、浸水域の自宅で待機した場合の危険性を説明しつつ、住民各自に対して、親戚や知人宅、宿泊施設や勤め先など、広域避難先の確保を求めている点も優れていると感じております。戸田市も全域が水没しますので、江東5区と危険性は変わりません。戸田市独自の避難情報を発信の流れをつくり、広域避難は1日前までに行い、広域避難場所は各自で事前に確保することなど、当日9時間前には垂直避難を原則とすることなど、そういった定めをすることが必要かと考えます。江東5区で実施している広域避難するための情報発信や、親戚や知人等への広域避難を戸田市でも実施できないでしょうか、お伺いいたします。
◎森谷精太朗 危機管理監 江東5区における広域避難については、台風が接近する時間により、江東5区以外の安全な場所への自主避難を呼びかける情報を発表しているものと認識しております。今後、本事例を参考に、本市における広域避難の向上について検討してまいります。
◆1番(矢澤青河議員) 再質問いたします。
大規模災害時、自治体は被害を受けても一定の業務を行うことができるよう、業務継続計画、BCPを策定する必要がございます。江東5区である足立区や墨田区では、水害時のBCPを策定しております。その中では、避難所ごとの備蓄状況や電気や給水、電話などのライフラインのリスクなどを表にまとめていたり、本庁舎以外にも区内のほかの施設や区外の施設での業務継続計画を想定しており、代替庁舎や備蓄の確保などの課題を洗い出すなど、様々な想定シナリオに沿った対応を盛り込んだBCPを策定しております。戸田市においても、今後検討していく必要があるかと考えますが、水害時におけるBCP計画の策定状況や今後の計画についてお伺いいたします。
◎森谷精太朗 危機管理監 本市の大規模水害時における事業継続計画につきましては、現在、策定に至っていない状況です。今後、他自治体の事業継続計画や取組状況を参考に検討を進めてまいります。
◆1番(矢澤青河議員) 続きまして、周知啓発について再質問いたします。
参考資料の江東5区の水害時の啓発チラシでは、区内全域の水没、避難時の渋滞や電車運行停止、住まいや区内にとどまり生活することの危険性など、想定されるリスクを示して、読む方の危機感をあおり、早い段階での広域避難や親戚や知人など広域避難場所の事前確保を促進しております。
戸田市においても、ハザードブックや防災のチラシなどの広報を工夫して、水害に関わる啓発をはじめ、広域避難をもっと推奨する必要があるかと考えますが、お考えをお伺いいたします。
◎森谷精太朗 危機管理監 今年度、ハザードブックの改訂を行う際、荒川氾濫時の被害想定や市内にとどまることの危険性、また、広域避難の必要性などの広報を充実させることにより、市民の皆様の広域避難の意識が高まる内容となるよう努めてまいります。 ◆1番(矢澤青河議員) 防災対策や避難については、教えてもらわなければ思い至らないことも多いと感じております。私自身、災害時の避難は当日に自宅か避難所へという選択肢のみでした。早期の広域避難、台風19号で被害の多かった車の水没防止対策、道路から家の側溝掃除など、少しでも多くの方が防災を自分事として捉えていただくような広報啓発活動をお願いいたします。