戸田市議会議員・無所属

【一般質問】成年後見制度について

やざわ 続きまして、件名2、成年後見制度についてお伺いいたします。
 認知症や知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な方の財産や権利を守るため、家庭裁判所が後見人を選び、この後見人が法的に支援する制度が成年後見制度です。この成年後見制度には様々な課題があり、本年3月に第2期成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定されました。戸田市において、成年後見制度を進められていらっしゃると思いますが、その現状と今後についてお伺いいたします。
やざわ ありがとうございました。それでは、順次、再質問いたします。
 参考資料の1ページ、件名2の部分を御覧ください。この成年後見制度の本来の目的は、認知症となった高齢者を悪徳商法や詐欺から守る、また、親亡き後の障害児の生活支援や財産管理を担うなど、判断能力の不十分な方々を保護し支援することです。
 国は潜在的な後見ニーズとして、判断能力が不十分だと見られる方が、推定約1,000万人いると想定していますが、実際の全国の利用者は約24万人ほどで、想定の3%にも満たない状況です。
 戸田市では、実際に法定後見制度を利用している方も143件、昨年中の申立ては19件しかない状況であり、成年後見は想定よりも伸びていない状況であることがここに分かります。
 ここで、今回の質問の趣旨をお話しいたします。後見制度は、判断能力と頼り先がなくなった方のセーフティーネット、救済措置のための制度です。もともとは家族が無料で家族の後見をする想定で制度設計されておりました。しかし、現在の後見制度の実態としては、法律や手続が難しく、法定後見人に選ばれるのは家族が2割、残り8割が弁護士や司法書士などの士業です。後見を途中でやめることはできず、後見人の解任も困難、費用もかかるため財産がなければ使えないなど、制度的に様々な欠点が点在し、導入する方は大変限定的なものとなっております。
 このような制度にもかかわらず、国や関係機関は後見制度を推進し、場合によっては使わなくて済む方にまで利用を勧める動きがあるようにも感じております。後見制度は、この制度でしか救えない方がいる最後のとりでとして、なくてはならない制度ですが、一方で欠点も多い制度です。後見を始めた方が、こんなはずではなかったとならないよう、市民、行政、関係機関が理解を深め、慎重に活用していかなければなりません。
 資料の①任意後見と法定後見の表を御覧ください。後見は主に2つに分類できます。まず任意後見は、本人にまだ判断能力がある状況で、事前の備えとして手続を行う後見制度です。後見人を自分で任命することができ、費用も両者で決められ、実際に任意後見人の7割が家族、3割が士業が担っています。続いて、法定後見は、既に判断能力がなくなった方が利用する制度であり、後見人や費用などは全て家庭裁判所が決定し、後見人は8割が士業、2割が家族が担っております。自分で後見人を選ぶことができないため、トラブルも法定後見のほうが多いようです。
 続いて、実際にあった②後見の事例、同居の親の預金管理や相続について紹介します。
 同居していた母の死で、父の認知症が悪化して父が署名が不可能となり、銀行から預金管理や遺産相続のためには成年後見が必要だと言われ、子供が法定後見人となったが、別途専門職の監督人がつき、毎年24万円の報酬が発生、さらに親の預金管理について、監督人や家庭裁判所に申請や報告が必要となり、生前両親と話していた相続税対策が不可能になってしまったというケースです。
 実際に、資料③の後見を始める原因やきっかけに記載されているとおり、認知症が原因で後見を始める人は全体の63.7%と最も多く、始める動機やきっかけとなったのは、認知症となった方の預貯金などの管理や解約に伴い始めた方が32.9%、続いて多いのが身上保護で24.4%を占めます。このような制度と申請者のミスマッチが発生するのは、金融機関の認知症による口座凍結への対応は後見制度の利用を原則としているため、相談時に後見制度やリーガルサポートを勧められていることも一因となっております。そのため、預金管理や財産相続で銀行、税理士等から助言され、後見を始める人は多いですが、面倒を見る方がいる状況で銀行や財産相続のためだけに一生続く後見を選択するのは賢明ではないと考えております。後見はとにかく難しく、分かりづらい制度であり、どのくらいの費用がかかるのか、実際に後見人は何をしてくれるのかなどが見えづらいのもミスマッチの一因となっております。
 参考資料の2ページ、④後見の費用や必要度を御覧ください。大まかに法定後見では、月々2万円から8万円、任意後見では後見人が月々1万円から5万円、監督人が1万円から3万円で、どちらも年間約50万円から100万円程度かかります。さらに、詳しくは後見制度に関する個別相談と人材育成を担う日本唯一の専門機関、後見の杜が提供しているホームページの費用概算シミュレーターと必要度査定フォームで簡単な質問に答えるだけで、後見の費用や必要度をはかることができます。パソコンやタブレットから、参考資料の青い文字や画像をクリックすることでリンクに飛びますので、御興味がある方はお試しください。
 続いて、参考資料の⑤後見人候補と相談先を御覧ください。後見人の候補は専門職ごとに強みが異なります。後見人の仕事は生活に関する支援である身上監護と金銭などに関する支援である財産管理の2つに大きく分類されます。弁護士や司法書士、税理士などの士業は、相続や預貯金管理などの財産管理などに強みがある一方で、身上監護や保護は専門性が低く、利用者から、毎月数万円支払っているのに施設などへの面会などが年に一、二回しかなくて、何もしていないと不満に思われるケースもございます。反対に社会福祉士や社会福祉協議会などは財産や相続制度の専門性は低いですが、生活ケアなどの身上監護に強みがあり、団体や法人で毎月1回以上の面会を条件にするなどの特徴があります。それ以外にも数は少ないですが、障害者の家族会や市民後見人、シルバー人材による後見人などもあり、これらは無料や低い報酬で身上監護に強みがありますが、団体の数なども少なく広がっていないのが現状です。
 このように後見人候補にはそれぞれ特徴や強みが異なっており、相談者のニーズに合わせて紹介を行うことが理想です。しかしながら、後見制度は法律や手続の専門性が高いことから、現在の相談先は初めから弁護士や司法書士などの士業につなげられることが多く、そういったところも課題に感じております。相談者のニーズを把握して、そもそも後見が必要かどうか、後見の前にそのほかの対策はないか、相談者のニーズは身上監護が大きいため、後見人には社協や家族がいいのではなど、幅広く総合的に相談できる場所が少ないのではないでしょうか。
 国は現在、中核機関を中心とした相談体制を進めておりますが、この中核機関も単独の団体が受けては偏りが生じる懸念がございます。中核機関には生活ケアなどの身上監護の専門性の向上や本人、家族のニーズの把握と総合的な相談対応、家族や市民などが後見人となれるような後見人支援策などが最低限必要だと考えております。
 参考資料の⑥は、成年後見制度の課題とそれをめぐる近年の変化です。後見人の選任については、これまで弁護士や専門職中心であり、家庭裁判所が任命することもあり、解任することは大変困難で限定的でした。これに対して、柔軟に後見を交代することが最高裁判所から通知され、ふさわしい親族がいれば選任が望ましい、中核機関が推薦を勧めるなど考え方が変化しております。報酬や業務についても、これまでは財産額に応じた一律額であり、財産管理が中心でしたが、最近では業務や難易度に応じた額へ見直すよう促すことが最高裁から通知され、当事者のニーズの高い生活をケアする身上監護や保護を重視するなど、変化しております。
 また、後見人に対する支援を行う地域や団体は、これまでほとんどなく、家族後見人や市民後見人などの相談先がなく育たない状況でしたが、今後は市区町村単位で置かれる中核機関を中心に実施する方向に変化しております。この記事は3年前のものですが、成年後見制度の体制や制度は現在でもまだまだ整備されておらず、その原因の多くは国にあると考えております。しかしながら、課題が多いのは確かであり、戸田市の成年後見制度の運用ではそれらを考慮して、相談者と制度のミスマッチが生まれないようにしていかなければなりません。市へ相談に来た方を士業などの相談先へつなげるだけで、市民は戸田市のお墨つきを得たと感じてしまいます。後見は最後のとりででありセーフティーネット、対象者はすごく絞られるものでございます。制度を理解する前に安易に導入を勧めるものではございませんし、最低限の費用や制度、法定や任意、後見人が士業か家族か、身上監護など実際どのような対応をしてくれるのかなど、相談者が理解し納得した上で進める必要がございます。そのため、相談先へつなげる前に参考資料の⑦の後見が必要かどうか見極めるチェックリストなどを活用して、相談者の後見ニーズ調査を行い、後見の必要性やニーズを把握し、それに合った相談先を案内するなど、総合的な相談を行える体制が今後必要になってくるのではないかと考えております。
 後見を始めた市民が、こんなはずではなかったとならないよう、後見制度の相談先やマッチング、後見制度の利用における影響についての分かりやすい説明など、市の状況をお伺いいたします。
やざわ ありがとうございました。今回の成年後見人制度について、特に法定後見については調べれば調べるほど慎重に取り入れなければならない制度だと感じました。改めて申しますが、もともとは家族は無料で、家族の後見人をする想定で制度設計されておりました。しかしながら、当初の思いと実際の制度の乖離が大きく離れているのが現状です。特に費用については、毎年24万円とか50万円程度かかっておりまして、費用がなければ導入できない制度です。もともと障害者の親亡き後の親代わりとして期待されていながらも、お金がなければ利用できない制度であり、障害者の親御さんからも見放されてしまった部分もあるかと思います。
 今回の質問に関して、実際に関係する方々にお話を伺っても、やはり利用者のニーズと制度の乖離というのが大きく課題に感じております。なかなか国の整備が進まない状況ではございますが、こういった課題を考えて、今後とも戸田市においては制度の慎重な取組を要望いたします。
 以上で私の一般質問を終わります。ありがとうございました。