(1)アレルギー対策の推進について。 (2)災害時の対応について。
アレルギーについての(1)アレルギー対策の推進について。
アレルギー疾患は急激に増加しており、国内の2人に1人が何らかのアレルギーに罹患しているとも言われており、アレルギー疾患対策は喫緊の課題でございます。ある試算では、花粉症などのアレルギー性鼻炎患者の労働生産性の低下や睡眠障害などによる経済的損失は、日本全体で年間約4兆4,000億円とも算定され、アレルギーは今や国民病となっております。しかしながら、アレルギーは、社会全体に与える影響が大きいものの、発症並びに重症化の要因など、いまだに明らかになっていないことも多く、根本的な療法の開発や普及も十分ではございません。また、ネットや書籍には膨大な情報があふれており、この中から適切な情報を選択することが困難な状況となっております。
こういった状況の中、国において、平成26年6月にアレルギー疾患対策基本法が施行され、本年3月にアレルギー疾患対策に関する基本的な指針が策定されました。その指針の中で、地方公共団体においては、アレルギー疾患に関する啓発及び知識の普及、業務を統括する部署の設置または担当者の配置、医療を提供する体制の確保、生活の質の維持向上、及び災害時の対応の努力義務が記載されております。そして、国民においては、アレルギーに関する正しい知識を持ち、予防や症状の軽減への注意に努めるとともに、アレルギー疾患を持つ方への正しい理解を深めるよう努めなければならないと記載されております。
今後は、戸田市においても、国や県の動向を注視し、連携してアレルギー疾患対策を推進していかなければならないと思いますが、戸田市におけるアレルギー疾患対策の現状と指針に記載されるアレルギー対策を統括する部署がどこか、お伺いいたします。
また、アレルギーの早期発見、正しい知識の普及のためにも、乳幼児健診時に乳児のスクリーニングなどのアレルギー検査や、大阪などで開かれているアレルギー教室を、戸田市でも開催できないでしょうか、お伺いいたします。
続きまして、(2)災害時の対応についてお伺いいたします。
アレルギーを持つ方は、日ごろより食事や環境など神経をすり減らしておりますが、震災時は、特に急激な環境の変化や物資の不足などで、大変苛酷な状況に陥ります。また、避難所などにはさまざまな方が集うため、アレルギーに対する無理解から御苦労されることも多いとのお話も伺っております。先ほどのアレルギー疾患対策に関する基本的な指針の中で、国においては、乳アレルギーに対応したミルクなどの確保及び郵送支援や、食物アレルギーに対応した食品の提供体制の支援などとすることと記載され、地方公共団体において、ウエブやパンフレットを利用したアナフィラキシーなどの重症化予防の努力義務などが記載されております。
そこでまず、災害時の避難所におけるアレルギー対応食品の備蓄の状況と、アレルギーを持つ方をどのように把握されているのかをお伺いいたします。
◎松山由紀 福祉部長 2の(1)アレルギー対策の推進についてお答えいたします。
まず、アレルギー対策に係る業務を統括する部署としては、市民の健康増進や疾病予防を所管する福祉保健センターでございます。現在のアレルギー対策としては、母子保健事業を中心に行っており、乳幼児健診や離乳食学級、育児相談において、集団指導や個別相談を実施しております。特に出生後から離乳食を完了するまでは、乳児湿疹、アトピー性皮膚炎などが起こりやすく、保護者にとっては食物アレルギーに関心が高い時期でございます。アレルギーにはさまざまな症状がございますので、日常生活で悪化させないケアの指導や、治療の必要があれば医療機関を紹介するなどの対応を行っております。
次に、乳幼児健診にアレルギー検査を含めることについてでございますが、特にアレルギー症状のないお子さんも含めて対象とすることは、慎重に考えていく必要があろうかと思います。例えば、血液検査でアレルギーの抗体価を測定しますが、アレルギーの発現は抗体価の値に必ずしも相関関係にないという実態がございます。つまり、症状がなくても抗体価が高いことがあり、そのような場合には保護者は非常に不安になります。逆に、症状があっても抗体価が正常範囲である場合は、その症状の治療に消極的になる場合もございます。したがって、アレルギーについては、集団健診でというよりも、アレルギー症状が出て検査や治療が必要と思われるお子さんに小児科やアレルギー専門医の受診を勧めることが大切と考えております。次に、アレルギー予防教室についてお答えします。この教室を行っている大阪市は、大気汚染により、過去に気管支ぜんそくの多発地域として指定されていた経緯があり、現在もこうした事業が実施されているとのことでした。また、市の規模が大きいため、アレルギーに不安のある教室の対象者数も、戸田市に比較するとかなり人数も多いものと考えられます。本市といたしましては、現在のところ、アレルギー検診や教室の実施は慎重に考えていきたいと思いますが、アレルギーは、赤ちゃんから高齢者までどの年齢でも発症する可能性があり、その症状や程度もさまざまです。当事者や保護者の不快感・不安感は深刻なものであると思います。市としましては、今後も、アレルギーに関して、現在実施している事業を充実させていくとともに、事業を担当する保健師・管理栄養士等職員は、正しい知識の習得とともに情報収集を怠らず、相談に対応できるよう努めてまいります。また、市民の皆様には、福祉保健センターでアレルギーの相談ができることについても積極的に周知をしていきたいと考えております。
以上です。
◎石橋功吏 危機管理監 (2)災害時の対応についてお答えいたします。食料の備蓄については、埼玉県地震被害想定調査において、東京湾北部地震発生時の避難者のピーク時である、発災から1週間後の人数である約1万400人を想定し、避難者の3日分として10万8,000食分の備蓄をしております。これらのうち、アレルギー対応食といたしましては、アルファ米8万7,000食を備蓄しており、順次、アレルギー対応食への置きかえを進めてきたところでございます。また、避難所でのアレルギー対応が必要な方の把握方法といたしましては、避難所に来所した際に、避難所カードの特記事項として記入をしていただくことにより、把握することとなっているところでございます。
以上です。
◆1番(矢澤青河議員) ありがとうございます。
(1)のアレルギー対策の推進について再質問を行います。
先ほどの答弁では、アレルギーについては、症状が出た場合や相談をいただいた場合のみ詳しい知識や対応をお伝えするということで、それ以外の方への積極的なアレルギーに関する知識の普及を行わないというように受け取りました。しかしながら、相談しないまでも潜在的にアレルギーに関して不安を持っている方は多いのではないかと思っておりまして、インターネットや書籍には、アレルギーについての知識が新しいものから古いものまでたくさんあります。そういった中から、本当にどれが正しい知識なのかを探すのは難しい状況でございます。
例えば、以前は食物アレルギーの原因になりやすい食物の乳児期の摂取は避けるべきだと考えられておりました。しかし、現在では、アレルギーの原因になりやすい食物は乳児期早期から食べ始めたほうがアレルギーの発症予防につながるという説が有力視されております。例えば、ピーナツアレルギーのリスクが高い生後4から11カ月の乳児に対して行った研究によると、5歳までにピーナツを摂取した子供の2%未満がアレルギーを発症したのに対して、摂取しなかった子供では約14%がアレルギーを発症しました。また、既にピーナツに過敏であった特にリスクの高い子供のグループでは、ピーナツを摂取した子供の10%がアレルギーを発症したのに対して、摂取しなかった子供では35%が発症し、アメリカの国立アレルギー感染症研究所が発行した新しいガイドラインには、ピーナツパウダーやピーナツエキスを含むピューレ状食品や軽食を生後6カ月以下の幼児に導入することを推奨しています。また、卵アレルギーにおいても、生後6カ月からかたゆで卵を少量ずつ与えると、かたゆで卵を与えなかった群と比較して、鶏卵のアレルギーの発症を約8割予防できるといった研究結果も報告されております。
こういった知識を保護者が健診後に見つけ、相談もなく独自で対応してしまうことで、過剰摂取やアレルギー児への配慮がなかったりなど、間違った対処をしてしまう危険性もあり、不安がございます。こういったことからも、乳幼児の早い段階で、保護者に対してアレルギーに対する情報提供や指導を行う必要があるのではないかと思います。
東京都の調布市では、平成24年12月に市立学校で発生した食物アレルギーに起因する児童の死亡事故を受け、アレルギー対策を積極的に行っております。その中で、重点課題を、妊娠期、乳幼児期の保護者に対して、アレルギーについての正しい知識を普及することで、重症化の予防、早期発見及び適正な医療につなげることとして、市民へのアレルギーに対する不安の軽減、正しい知識の普及、受療行動へのつなぎや促しを目的として、事業を進めております。事業としては、専任相談員による相談体制の整備、乳幼児健診の問診での疾患調査と聞き取り、月1回の専門医師相談、年1回のアレルギー講演などを行っております。戸田市においても、例えば、問診においてアレルギーの有無や種類などの項目を追加することで、市内のアレルギーの現状把握とともに、そういった項目があることで、アレルギーに対する相談のしやすさなども向上させることができるかと思います。また、乳幼児に対しては、血液検査をすることは難しいかもしれませんが、簡易なスクリーニング、例えば、家族のアレルギー歴やアトピー性皮膚炎などの湿疹、喘鳴などはアレルギー疾患と相関関係がございます。そういった情報から、アレルギーハイリスク児を選定し、程度に応じた適正指導や専門医による相談、医療機関への紹介などを行うことが可能と考えます。また、潜在的にアレルギーについて不安に思っているが直接相談まではできない方などもいらっしゃるかと思います。そういった方々に対して、アレルギー講演会の開催により、正しい知識や最新の情報の普及を行うとともに、アレルギーと銘打ち、門戸が広がることで参加も促せるのではないかと考えます。また、ぜんそくや花粉症など、成人に対しても正しい知識の普及を促すとともに、医療相談体制を充実させることや、医療機関にお願いして、健診時にアレルギー検査の自費オプションなども追加してもらうことなども考えられます。
現在、アレルギーについては、基本指針が示された段階で、今後の県やアレルギー学会などの動向によるところも大きいかもしれませんが、戸田市としても、今よりもう一歩進んだアレルギー疾患対策を行っていただきたいと考えております。御見解をお伺いいたします。
◎松山由紀 福祉部長 矢澤議員にいろいろお調べいただいたことも含めて、本当にアレルギー疾患というのは古くて新しい問題だという思いを強くしております。このアレルギーについては、本当に20年ぐらい前ですか、1990年代に非常にアトピー性皮膚炎のお子さんがふえるというようなことを健診でも経験しておりまして、その当時は、例えば、ステロイドのどういう治療をするかということについて、皮膚科と小児科で意見が違ったりとか、お母さん方の中では極端な食事制限を自己判断でするとか、非常に保健分野でも混乱した時期がございました。今、現状をちょっと申し上げますと、実感としては、アレルギーに関して、乳幼児健診、相談等の現場においては、少し落ちついてきているかなという印象は持っております。戸田市乳幼児健康ダイヤル24という相談をやっているんですけれども、平成27年度は、延べ5,471件の相談のうち、アレルギーに関する相談が127件、2.32%、また、28年度は、延べ5,050件の相談のうち139件、2.75%ございました。この数を多いと見るか少ないと見るかですけれども、この数が減ることはないと思います。今後ふえてくる可能性もあるような数字だというふうに思っています。
また、例えば、平成29年8月の健診分で、特段全員の方に問診の中でアレルギーがあるかいないかという項目を入れてはいないんですけれども、現在治療中であったり、また、不安に思うことはないかということの記載の中で拾ったものでは、4カ月健診では、受診者120人中、お一人御相談がありまして、お兄ちゃんがアレルギーにかかったのでぜんそくになりやすいのではないかと心配している。アレルギー検査はしたほうがいいんだろうかというような御相談がありました。また、1歳児健診では、受診者119人中3人について、食物アレルギー、アトピー、ぜんそくぎみということで治療中の方がおられました。1歳8カ月健診では、受診者103人中6名の方がやはり食物アレルギー、アトピー、ぜんそくということで治療中、また、3歳6カ月健診では、97人中6人について治療中の方がおられたというようなことになっております。これは問診で聞き取ったものなんですけれども、年間の、医師が重篤なものとして判断する件数としては、5健診合わせて5人から8人程度が結果として載ってきているという状況です。
国の資料を見ましても、このアレルギーの専門医の偏在といいますか、いろいろ心配するんだけれども、適切な治療機関になかなかつながらないというような問題もあって、その辺のことも国の指針の中で言われているんですが、戸田市においては、非常に医療機関も充実しておりますし、アレルギー疾患専門医もおられますので、そういう意味では、お母さんたちが納得して治療ということに比較的結びついている、効果みたいなものも出ているのかなという気はしております。
しかし、先ほど議員からおっしゃっていただきましたように、国のほうでこのアレルギー疾患対策については、それぞれの市の実情に応じた対策を推進していくというふうに指示も出ておりますので、今ある事業を充実させていくことはもちろんですけれども、さらなるどういった取り組みが有効かということについては、地元の医師会、また、薬剤師会の専門家の方とも御相談しながら、具体的なものについては研究をしていきたいというふうに考えております。
以上です。
◆1番(矢澤青河議員) 詳しく教えていただきまして、ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、(2)災害時の対応について再質問を行います。
アレルギーを持つ方を避難者カードにより把握されるとのことでしたが、実際の避難所では、アレルギーを持つ方に対して、カードを確認しながら食料を配布することが難しいかと想像されます。例えば、受け渡し場所を変えるだとか、原材料やアレルギーフリーということを表記や口頭などで伝えるなど、何か工夫を行うなど、食料配布時に工夫できないか、お伺いいたします。
◎石橋功吏 危機管理監 避難所における避難者カードをもとにアレルギーの方の食料を手配することとなっておりますので、基本的には、アレルギーの方は自己申告をしていただくということから、適切な食料が行き渡るよう配慮してまいるということでございます。
以上です。
◆1番(矢澤青河議員) 再質問いたします。アレルギーを持つ小さなお子さんなど、配布時にしっかりと申告できないことも想定されるかと思いますので、適切な配布体制をよろしくお願いいたします。
さて、食物アレルギーのほかにも、毛布のほこりやダニ、粉じんやたばこの煙、衛生環境の悪化によるカビの発生など、ぜんそくやアトピーを持つ方にとっても避難所は非常に厳しい環境となります。特にぜんそくの症状が重い方にとって、急な発作は最悪死に至る事態となります。こういった重篤な症状を持つ方は、ぜんそくにかかわらず、皆さん避難者カードに記入されるかと思いますが、実際の現場で避難所カードと症状を持つ本人がすぐに一致するかなど、少し懸念がございます。急な発作の場合、一々カードを確認することはできませんし、そういったことからも、重篤な症状を持つ方に対しては、例えば、ハンカチや包帯を腕などに巻いて、カード番号や症状を記入したり、避難者カードを切り取れるようにして、安全ピンなどで名札のようにつけるなど、ぱっと見て何かしら配慮が必要な方だとわかるようにするなど、避難者カードと本人がすぐに一致できるよう、体制をつくることも考えられます。こういったことに限らず、避難所において、ぜんそくやアレルギーを持つ方への配慮について、御見解をお伺いいたします。
◎石橋功吏 危機管理監 避難所には、ぜんそくの方を含め、さまざまな症状の方が集まってまいります。避難者カードの記入情報により判断させていただき、症状によっては、医師や専門の方と話し合い、避難所での個別対応をしてまいります。
以上でございます。 ◆1番(矢澤青河議員) 避難所では、アレルギーに限らず、病気やけが、障害を持つ方、さまざまな方がいる可能性があり、お話しいただきましたとおり、現実的には一人一人個別に対応していかなければならないものかもしれません。また、災害は何より自助が肝心であり、自治体がどこまで備えればよいのかというのは難しいところかとは思います。しかしながら、今後、避難所ごとに避難所運営協議会を立ち上げ、市職員や地域の方、関係者の皆様で避難所運営のガイドラインなどを作成していかれることと思います。その際には、できる限りの想定をしていただくとともに、ぜひアレルギーに限らず、当事者の方や団体、研究者など、実際の声をお聞きして進めていただきたいと思います。これは要望とさせていただきます。